7歳だったキミへ

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7歳だったキミへ

 僕が親になれたのは、キミのおかげだ。  キミは可愛かった。僕の息子だとは信じられないほど、本当に可愛かったよ。その頃の写真が残っているけど、実物のキミは十倍可愛かったと思う。  よくぞ、僕たちの元に産まれてきてくれた。そのことに対し、神様にお礼を言いたいくらいだ。  キミが産まれてから7歳になるまでが、最も幸せな時期だったと思う。すべて、キミの可愛らしさと笑顔のおかげだ。キミの一挙手一投足に僕たちは大喜びだった。  キミには心から感謝している。その気持ちに嘘はない。キミが何をしても、僕はキミの味方だし、それが父親としての僕の義務だ。  ただ、僕の気づかないところで、7歳のキミは酷いことをしていたみたいだね。見かけは天使のようなのに、していることは悪魔のようだったとか。ずっと後になって、ママから聞いたよ。  僕には信じられなかった。信じられるはずがない。チョウの羽をむしったとか、バッタの後ろ足をもいだとか、耳を疑うようなことばかりだった。  とりわけ、キミが同級生の男の子にしたことは、決して許されることじゃない。  ああ、わかっている。キミが大事にしていた玩具を盗んでおいて、それがバレると逆ギレして壊してしまったというんだろう。キミが腹を立てたのは当然だと思う。  僕の会社にも同じような人間がいる。大人になっても、そんなバカげたことをするんだ。7歳の子供なら仕方ないことさ。キミは我慢すべきだったんだ。  殺めてはいけない。  どんな理由があろうと、人を殺めてはいけない。殺人は犯罪の中で、最も重い罪だ。もし、キミを7歳に戻せたら、僕は何が何でも阻止していただろう。それが父親としての僕の義務だ。  さて、この10年間で、キミは何人を手にかけた? 何人の命を人知れず、葬り去ってきた?  信じられないよ。僕の知らないところで、キミはモンスターの仮面をかぶっていたんだね。いや、僕の知っている方が仮面だったのか……。  ああ、天国に召されたママに合わせる顔がないよ。  誤解しないでほしい。責任逃れをするつもりはない。子供の犯した罪は、親の責任だ。キミの殺人は、監督者である僕の罪でもある。  わかるだろう。罪は償わなければならない。ほら、大人しくしてくれ。そんなに暴れると、手元が狂うじゃないか。  もちろん、僕も一緒にいくよ。あの世でママに会えたら、一緒に謝ろう。  いや、キミと行くのは地獄だから、ママには会えないか。                  了
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