10年の年月

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「ひーなーせー、一緒に帰ろうぜ」 幼馴染の鷹斗(たかと)が、後ろから肩を組んでくる。 別に変わったことではない。 男同士の友人で良くあることだと思う。 「やめろって!」 なのに、意識しすぎて力強く振り払ってしまう。 昔はそんなことなかったのに。 「なんだよ、オレそんな汗臭い?」 「ガキじゃねーんだから、そんなにベタベタくっつくんじゃねーよ」 「や、普通だろ?陽瀬(ひなせ)パーソナルスペース広すぎじゃね?」 ケチーっと、頬を膨らませた鷹斗が横に並ぶ。 昔は俺の方が背も体格も恵まれていたはずなのに、中学に入ったとたんに入れ替わってしまった。 今では、バスケ部のエースで俺より10㎝も背が高くなった鷹斗と写真部の俺。 「俺、寄るところあるから一緒に帰らない」 「どこ?オレも行くよ」 「カメラ屋。たぶん2時間くらい居座る」 これは、本当の事。 目標金額までバイト代が貯まったので、カメラを新丁したいので吟味しようと思っていたのだ。 「2時間?……も?」 「色々見比べたいからな」 興味のないところで、時間を潰すことが…しかも、動けないところが鷹斗が苦手なことを俺は知っている。 なんせ、かれこれ16年の付合いだ。 「わかったよ、先帰る。…せっかく部活なくて久々に一緒に帰れると思ったのに……お前朝も早いし」 「朝は普通だ。お前がギリギリなだけ」 意図的に会わないようにはしているが…。 「それじゃ、また明日な!」 少しだけむすっとしながらも、手をふって離れていく鷹斗を見送ると、カメラを見るべく店に向かった。
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