0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「ひーなーせー、一緒に帰ろうぜ」
幼馴染の鷹斗(たかと)が、後ろから肩を組んでくる。
別に変わったことではない。
男同士の友人で良くあることだと思う。
「やめろって!」
なのに、意識しすぎて力強く振り払ってしまう。
昔はそんなことなかったのに。
「なんだよ、オレそんな汗臭い?」
「ガキじゃねーんだから、そんなにベタベタくっつくんじゃねーよ」
「や、普通だろ?陽瀬(ひなせ)パーソナルスペース広すぎじゃね?」
ケチーっと、頬を膨らませた鷹斗が横に並ぶ。
昔は俺の方が背も体格も恵まれていたはずなのに、中学に入ったとたんに入れ替わってしまった。
今では、バスケ部のエースで俺より10㎝も背が高くなった鷹斗と写真部の俺。
「俺、寄るところあるから一緒に帰らない」
「どこ?オレも行くよ」
「カメラ屋。たぶん2時間くらい居座る」
これは、本当の事。
目標金額までバイト代が貯まったので、カメラを新丁したいので吟味しようと思っていたのだ。
「2時間?……も?」
「色々見比べたいからな」
興味のないところで、時間を潰すことが…しかも、動けないところが鷹斗が苦手なことを俺は知っている。
なんせ、かれこれ16年の付合いだ。
「わかったよ、先帰る。…せっかく部活なくて久々に一緒に帰れると思ったのに……お前朝も早いし」
「朝は普通だ。お前がギリギリなだけ」
意図的に会わないようにはしているが…。
「それじゃ、また明日な!」
少しだけむすっとしながらも、手をふって離れていく鷹斗を見送ると、カメラを見るべく店に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!