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祈りは届く
十年前の自分が何をしていたか。正直、あまり良い思い出はなかったような気がする。
こっそり二次創作を書いて、自分のサイトなどにアップはしていたが。だからといって、大幅にいろんな人に評価されるわけでもない。二次創作だから書籍になるわけでもないし、ランキングに上がるということもない。
感想をもらえて、嬉しい気持ちになることもあるが、何よりもリアルが辛くて躓いていたという記憶が大きいのだ。
なんせ、当時働いていた職場がブラック企業というやつだった。
食事は三十分以下の休憩時間で強引に詰め込み、あとはずっと立ちっぱなし。
有給休暇を申請すると、申請がオール却下される。
散々残業をしまくった筈なのに、給料明細を見ると月の三十時間が“三十分”というわけのわからないことになっている。
そもそもタイムカードを切る前、切った後も普通に仕事をしている。
酷いと午後三時に出勤し、午前六時半に退勤、翌の正午に再出勤というわけのわからないタイムスケジュールを課されたこともあった。とにかく仕事がハードすぎて、心身ともに折れる寸前だったのだ。
唯一のよりどころが、書くことだった。
私には、小説を書くことしかなかったのだ。
しかし今の状況、家には僅かな時間眠るために帰るような日々。このままでは、大好きな小説の執筆さえもままらななくなってしまうのではないか。このまま仕事を続けていたら、自分はなんのために生きているのかもわからなくなってしまうのではないか。
そう思って、真っ暗な闇の中に蹲っていた。今、果たして自分が本当にきちんと息ができているのか、それさえもわからなくなるほどに。
現実には、タイムマシンはない。
だから私は十年前の私に、何かを言ってやることはできない。
それでも何か、言える言葉があるとしたら。私は十年前、リアルにも趣味にも躓いて蹲っていた私にこう言うだろう。
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