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十個の約束
君と、十個の約束をして家に置いてもらうことになった。
一個目、この約束は一年毎に一つずつ、任意のタイミングで加算されること。それを決して破らないように。
二個目、勝手に部屋に入らないこと。次に入ったら許さないからな。
三個目、外出する時は一声掛けること。何処に行ったのか心配になる。
四個目、勉強をする為に学校に通うこと。嫌でも毎日通え。
五個目、テストの点数は赤点を下回らないこと。約束は守ってるなんて屁理屈言わずに、きちんと授業を受けろ。
六個目、友人を一回は家に呼ぶこと。友人が居る、って言う時にどれだけ目が泳いでいるのか、分かっているのか?
七個目、昔の常識が当たり前だと思わないこと。忘れろとは言わないが、普通の人間はそんな風に包丁は扱わない。
八個目、仕事を手伝わないこと。お前に手伝われると、意味がなくなるだろうが。
九個目、此処に来てからの日記をつけること。この日常を忘れない様に振り返ることも大切だ。
十個目、この家から出ていくこと。お前はもう、普通の人間として生きられるのだから。
君はそう言ったくせに、私の前から姿を消した。
家から出ていくのは、君の方じゃないか。
すっかりと綺麗になった手が、視界には写っていた。
十年前から、君はこうするつもりだったのだろうか。訊きたくても、もう君は居ない。
――ねえ、答えてよ。
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