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ちはるが振り返ると
『女を1人で帰らせれるか!』と自転車を漕ぎながら笑ってこちらへくる拓也の姿があった。
『ちはるの門限もう若干過ぎとろぅ?じゃけ、親父さんにちはるが怒られたら俺のせいじゃけえって謝るけぇ家まで送るわ』
と言って付いてくる。
ちはるは、拓也を信じていいのか
何か悪いことをされるんじゃないか
色んなことが頭をよぎったが、
拓也のは錆びた自転車。
ちはるのは電動自転車。
ちはるの家はさらに急な登り坂をあがる。
だから、
電動自転車なら逃げれば勝てると思った。
でも充電があと10%しかないので
拓也の家の前の緩やかな登り坂は
節電のため押して登っていた。
『わかった。ありがとう!
拓也くんちは門限大丈夫なん?』
『門限はねーけど妹2人留守番させとるけぇ早よ帰らんといけん!
チー坊送ったらすぐ帰るけんの!
あ、でも親父さんに怒られたらすぐには解放されんかもなー!やべー!ははははっ!』
『まって、チー坊って、私のこと?』
『おう!』
『なんで!』
『俺が好きなラッパーがマーボーって言うんよー。じゃけ。』
『ふぅーん。
てか妹が留守番って、親は?』
『あー、母ちゃんが今日は夜勤じゃけ!おやじはおらん!』
『そうだったんじゃ。
言いづらいこと聞いてごめんね。』
『いや!なんでも聞けやチー坊!
お前にはなんでも教えちゃらあ。
ゆーて、俺、人に秘密せんけぇ全然チー坊以外にも話しょーるけどな!』
そんなことを言いながら
2人で自転車を押しながら
坂道を歩いていた。
拓也は見た目に反して
優しい人に見えた。
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