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「うわ、これ全部残しといてくれたんだ」
「当たり前よ」
カンカン箱に入っていたのは――漫画の専用道具。
「お、こんな物まで」
先がボロボロになっているGペンや、持ち手が墨で汚れたミリペン。よく愛用していた丸ペンも。付け替え用の新しいのもある。何に使うかよく分からずに買った羽ぼうきや、衝動買いしてしまったトーンまで……。色んなものが出て来て面白い。心が思い出したように弾む。
そういえば、暇さえあれば叔母さん家に来て漫画書くのに没頭してたなぁ。なんとなく、親の前で書くのは恥ずかしいから、って。
「蒼太、将来は絶対漫画家になるんだ! ってずっと言ってたわよね」
叔母さんが、何やら大きな紙袋を持ってきて、微笑ましい表情で見せてくれたのは――やっぱり、僕が小学生の頃に夢中になって描いていた漫画だった。それはもう凄い量で、コピー用紙から、本格的な原稿用紙まで、袋の底がはち切れんばかりにぎっしりと詰まっていた。下手に出したら大変な事になりそうだ。
「もしかして、全部とってあるの? もうとっくに捨てられたと思ってた」
何となしに言うと、「捨てるなんて、冗談じゃない」と叔母さんに割と真剣な口調で言い返された。そして、叔母さんは慣れた手つきで袋から何枚か原稿用紙を取り出す。
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