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「こんな所にいたのね」
そう言ってキミは、俺に向かって笑いかけた。時は黄昏。夕日を背にする彼女を見て、俺は路地裏で腰を抜かしかけた。
「な、何でお前が、ここに……」
「決まっているでしょ? あなたを恨んでいるからよ。私を裏切って、紀美を選んだあなた」
「だって、あれはもう十年前の事なんだぞ!」
「十年、経ったからよ。積もりに積もった想いが、私を突き動かしているの」
そう言われて、俺はただ愕然とするしかない。
十年前自殺して鬼魅(キミ)となった彼女が、俺に向かって微笑んでいる。
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