出るよ

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 ひとり暮らしの安アパート。  おれはゲームコントローラーを握りしめ、涙をぬぐうこともせず、エンドロールをながめながら感動に打ち震えていた。  最高のゲームだった。  前から「傑作だ」というのは知っていたが、ついにやる機会が来て、やってみたら、まあ、泣いた。  とりあえず本作は、一本で見事に完結したけれど、続けようと思えば続けられる。だが公式の発表によると、続編の製作はないらしい。悲しいけど、それもしょうがないのかもしれない。  実際、見事な結末だったもんなあ。おれのゲーム人生でもベスト5には入るマジの傑作だし。  でもやっぱ続編がでてほしいから、 「続編、出ねえかな……」    と、おれは独りごちた。  すると、 「出るよ」  と、とつぜん声が聞こえ、振り向くと、見知らぬおじさんがベッドに立っていた。 「え、なになに、怖い怖い怖い!」 「お、落ち着け、怖い怖い怖い!」  おれとおじさんが同時にパニックになる。 「落ち着け、おれはお前だ!」 「なに言ってんだバカ、出てけ!」 「これを見ろ!」  おじさんが胸ポケットから自動車免許のようなカードを出し、それをおれに放って渡す。  見ると、そこには「丙類時間旅行許可証」という文字とおじさんの顔写真、そしておれの名前が書かれていた。 「どうだ、信じたか?」 「……いや、まあ、はあ」 「まあ、どっちでもいい。おれは十年後からお前に伝えたいことがあって、時間をさかのぼってきた時間旅行者だ。だがいちばん安い『丙類プラン』で来てるから、三分間しかいられない。あと少しで、おれは消える!」  マジか。 「わ、分かりました。で、言いたいことってなんですか?」 「いや、言ったわ!」 「え?」 「さっき『出るよ』って言っただろ!」 「え、それだけ?」 「それだけだ!」  マジか。  戸惑っていると、おじさんが薄くなってきた。 「じゃあ、おれは戻るから、未来に!」 「ちょっと待ってください!」 「なんだ?」 「この十年のあいだに、なんかいいこととかないんですか?」 「ねえよ! でも十年後に続編が出る。そしてそれも傑作だ!」  マジか。  呆然としている中、おじさんが満足げな笑顔で消えていった。  十年後のおれ、こんなことを伝えるためだけにやってきたのか……  「丙類プラン」って、お金いくらしたんだろう?  それよりなにより、おじさん、ちょっと頭が薄くなってたな。  いろいろと……マジか……  でも十年後に続編が出るんなら、それはそれでマジうれしい。
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