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『美羽ちゃん、お誕生日おめでとう。今日で15歳になったのね』
画面の中の女性は優しく語りかける。
ほっそりした体型に、さらさらの長い髪。花柄のワンピースがよく似合ってる。
『中学校は楽しい?お友達と仲良くしてる?お父さんとは仲良くしてる?思春期を迎えた美羽ちゃん、どうかお父さんと仲良くしてね。それが、お母さんの一番のお願いです』
「お母さん…」
思わず画面に向かって呟いた。
『勉強なんかね、適当でいいのよ。高校なんて、贅沢言わなきゃどこにでも行けるんだから。でもね、どうしても行きたいって思う学校があるなら、勉強頑張らないとね。お母さん、天国で応援して…からね….』
画面の中のお母さんは、我慢出来なかったというように、口を押さえて俯いた。
私も我慢出来なくなってきて、両手で口を覆う。
「美羽!何観てんの!」
「!!!」
突然の大きな声に、体がびくりと震える。
突然の乱入者は、テレビのリモコンを取ると、ブチリとテレビを消した。
「どこで見付けたの…」
真っ赤な顔で私を睨み付けながら尋ねてくる。
「押し入れ…探し物してて…」
気まずくなって、目を逸らす。テーブルの上には合計14枚のDVDが置きっ放し。10年前、癌の告知を受けたお母さんが、毎年の私の誕生日に残してくれたビデオメッセージ。
「こんな物、さっさと捨てないと…」
「えー?なんでー?良いじゃんかー」
全てのDVDを持ち去ろうとする大きな背中に向かって言う。
「すごい泣けたよー」
「笑って言うな!」
お母さんは、どすどすと足音を立てリビングを出て行く。私もその背中を追って、リビングを出た。
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