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だが予想に反して、翔琉は俺を強くギュッと抱き締めた。
「――全然ダメなんだ。十年前と比べて、颯斗が益々美しくなって辛くて。今日も会社で、誰かにその魅力を振り撒くのかと思うと、激しい嫉妬に駆られて閉じ込めたくなる」
「……え?」
「すまないが、これから少しだけ黙って愛されてくれ」
強引に俺の唇を奪った後、翔琉はサイドテーブルから何かを取り出す。
「初めて颯斗に出逢った時……将来は、もっと良い男に成長するだろう、そう思っていたが――俺の目に狂いはなかったな」
真剣な眼差しの翔琉が、俺の左手薬指にそっと何かを嵌めた。
「十年前、悩んだ末俺と共に歩む道を選んでくれてありがとう。今まで、相当努力してくれただろう?」
どうやら翔琉は、俺の全てを見ていてくれたようだ。
感情が昂り俺の目には、熱いものが込み上げる。
「スイートテンダイヤモンド。今はもう、古くさいのかもしれないが、ずっと俺の傍にいてくれた感謝の気持ちを込めて」
「……こちらこそ、ずっと」
飛び付くようにして翔琉の首に手を回した俺は、言葉の代わりにキスをした。
十年前、偶然が重なり翔琉と出逢えたキセキ。
この先、翔琉とだったらずっと幸せでいられるだろう。
そう確信した、十年経ったある日の出来事だった。
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