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Sweet 10years Later
「颯斗、おはよう」
甘やかな低い声がそう言って、俺、高遠颯斗の額に軽くチュッとキスを降らす。
十年経っても、相変わらず俺を超絶に甘やかす超人気俳優である男、龍ヶ崎翔琉。
未だ際限なく俺を求め、時や場所関係なく蕩けさせる男に、赤面した顔を背ける。
とてもアラフォーとは思えないストイックに鍛え上げられた肉体美、熟された大人の魅力が増した美しい相貌。そして、十年前と変わらないガラス玉のような透き通ったグレーの瞳。
本人は「ずっと颯斗に恋しているからだ」なんて微笑みながら話すが、それは違う。
俺にはもう、十年前の初々しさや可愛げはないからだ。目標はずっと翔琉のようなカッコイイ歳の取り方をと目指していたが、結局、俺は何者にもなれなくて、どこにでもいる平凡なサラリーマンにしかなれなかったんだ。
変わらず俺は翔琉を大好きだったが、いつ捨てられてもおかしくない。この頃はそんな覚悟も密かにしていた。
「――全然、ダメです」
つい、自嘲気味に俺の本音がぽつりと口から洩れる。
「実は、俺も」
深刻そうな溜息をついた翔琉がそう申告する。
俺の心臓は大きく飛び跳ね、とうとう捨てられるのかと動揺する。
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