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まいったな、難しいお題が出ちまった。「10年前/10年後のキミへ」だってさ。また、こういう時に限って色々と予定が立て込むんだよなぁ。しょうがないからこうやって移動中の電車の中で頭を捻ってるんだが、クソ、何も浮かんでこない。
"助けてやろうか"
スマホと無駄ににらめっこしてたら、いきなりメンションを貰った。unknownさん?誰なんだろう。
"顔上げてみな。正面"
顔を上げた俺は目を見張った。向かい側の座席に座ってニヤニヤ笑いながらこっちを見ている男は、どう見ても俺自身だ。
身なりを見る限り、俺でも知ってる有名ブランドのスーツと立派な靴を身につけて、どことなく鷹揚な笑顔を浮かべている。俺は何となく安心した。そんな気持ちを見透かしたように、未来の俺はうなずくと、立ち上がって俺の隣に席を移した。
「そうだよ。俺は10年後のあんたさ」
ニコニコしながら親しげに話しかける10年後の俺の様子に妙な感覚を覚えながらも、俺はつい心を開いた。
「ええ……貴方が、てか、"俺"でいいのか……とにかく、幸せそうだね。身なりもいいし」
「うん、何不自由なく暮らしてるよ」
「車は何乗ってるの?」
「うん。普段使いにはフェラーリが二台。あと、お客さんと遊びに行くような時はマイバッハ」
「ふえ?」
思わず俺の口からマンガのキャラみたいな声が出た。どれもみんな、一度は乗ってみたかった車ばかりだ。いつの間に俺はそんな大金持ちになっちまったんだ?
「良かったなあ。ほっとしたよ」
「な、良かったろ?まったく、天国って所は欲しいものが何でも手に入るのさ」
"俺"の口から出た言葉に俺はどきりとした。
「え?てことはあんたは、いや俺は10年後には天国にいるってことなのか?」
「10年後どころじゃない。もうすぐこの電車はね……」
えっ?ちょっと。それって
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