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桜庭警部
「すまんね、立ち聞きをしてしまって。」
サラリーマン風の男は、立ち上がると背が高く肩幅も広い。がっしりとして屈強そうだった。
「桜庭警部、来られていたんですか!」部長が立ち上がって親しげに挨拶をした。
侑香が小声で呟いた。
「ほんっとに次から次と、マジでオレオレ詐欺みたいっ!」腕を組みまだ疑っているようだった。
「ここから先は警察が大塚さんを見張りますので君たちはもう危ないことをしないように!!」
桜庭警部にクギをさされ部長と部員がしおらしく頭を下げた。それから未藍と侑香に警察手帳を見せて言った。
「この件は大塚さんの保護者の方にも話さなければなりません。今日大塚さんを送り届けたらお宅に寄らせてください。」
未藍は桜庭警部が登場したことで、かえって心の中が不安でいっぱいになり吐き気が込み上げてきた。
(この話を聞いて叔母は平気だろうか?あの男が母を連れ去った犯人なら……もしそうなら母はもう……この世に?!)
オカルト研究部の人たちと話していた異界の生き物のことが急に嘘みたいに感じられた。
アルバイト先へは桜庭警部が電話を入れてくれ、未藍が今日は休むことと、誘拐未遂が発生したため従業員も通勤に充分注意するようにと店側と話をつけてくれた。
ーーパート先を早退し桜庭警部から経緯を聞いた叔母の響子は動揺し、未藍のアルバイトの継続と当面の外出が禁止になった。
未藍は、高校1年の長い夏休みを家で過ごすことになった。
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