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仲間
叔母の響子の提案で未藍の誕生日である8月23日に、オカルト研究部員と侑香を家に招きご馳走することになった。
今回の誘拐が未遂に終わったことへのお礼と、夏休み遊べなかた未藍のため会社から有給をもらって叔母と叔父は手料理をたくさん用意してくれた。
午前中からオカルト研究部の部員5名と侑香が未藍の家に集まった。
「皆さん、今回は未藍ちゃんの助けになってくれて本当にありがとう。たくさんおかわりして、いっぱい食べていってね!」
テーブルには唐揚げやスパゲッティ、何種類かのサラダ、厚焼き玉子にハンバーグと、子どもの好きそうな料理や飲み物が並んでいる。ここまでの子どもメニューは久しぶりと皆んな遠慮なくたいらげた。
皿の料理もだいぶ片付きお腹が満ちた頃、未藍が立ち上がって恥ずかしそうに話を切り出した。
「相談なんですけどもぉー。私もオカルト研究部に入部してもいいかなっ?」
「えぇっつっ!!??」
全員が驚いて声をあげた。
「ダメかな?場違い? なにか変?」
「いえいえ、そうではなくて。大塚さんみたいなタイプはオカルト研究部には入りそうにないなーっというただの偏見です、歓迎します、はい。ーーお家の方もそれで良いなら……。」
部長はそう言って、ちらっと叔母の顔を見た。叔母は不安そうな表情で返答に困っている。
「それなら僕が大塚さんを送り迎えします!!心配しなくても大丈夫です、護身術の教室にも通ってますんで!」
1年の瓜田が立ち上がって未藍の警護を名乗り出た。瓜田の申し出にその場の全員が、おそらく同じことを思ったのだろうが、その件について誰も何も口にしなかった。
「じゃあ、私も入る!!」と、侑香も立ち上がった。
「はぁっつっ!?!?」
未藍が入部希望を申し出たときよりも、さらに大きな反応が返ってきた。
「あなた、そもそもオカルトに興味ないでしょう?」1年の高井望実が不満そうに言った。
「えーっとね、オカルト部員の人たちは皆んなちょっーと現実とかけ離れたことばかり考えてるから、私みたいなリアリストが入ると丁度いいと思うんだよね。バランスよ、バ・ラ・ン・ス。」
侑香の言葉を聞いて叔母が丁寧に頭を下げて言った。
「皆さんがいてくれると安心です。未藍ちゃんのことよろしくお願いします。」
温かな雰囲気に包まれたリビングで、その場の雰囲気を壊すように侑香がたずねた。
「ていうか、うちの学校にオカルト研究部なんてないよね? 入学したときの資料にも学校のホームページにも載ってないんだけど、どーゆーこと!?」
衝撃的な質問に、叔母が少し険しい表情で部長の顔を見た。
「えー、すみません。説明します!!オカルト研究部という部の名前は存在しません。正式名称は地域歴史研究部です。顧問の滝川先生も地域史に詳しい日本史の先生です。
ただし、坂下町を中心にこの辺り一帯は民話や伝説や遺跡など数多くの興味深い歴史と不思議にあふれています。
オカルト研究部という名称で部の届出を出したのですが、残念ながら学校には正式に認められず滝川先生の助言で“地域歴史研究部”という名称で届出を提出しようやく受理されました。
しかし!生徒の間ではオカルト研究部と呼ばれていますし、ぼくたちもそう読んでいます。……こんな説明でご納得いただけますでしょうか?」
「うん、そーゆーこと、あるあるぅ!」
侑香のすっとぼけた返事に、響子も含めて全員が笑った。
それからしばらくそれぞれに会話を楽しんだ。高井望実は侑香とは気が合わないらしく言い合いをしている。未藍は部員に坂下町の不思議について質問をしている。瓜田はやたらテンションが高い。
そんな中、廊下で響子は部長の稗田に声をかけていた。
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