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虫喰いの拡散
次の日、駅から高校に向かう途中で侑香は未藍に声をかけた。
「未藍〜!もぉー昨日大変だったんだよぉーっ!」
「ごめん!ユウ。スマホが壊れてぜんっぜん字が読めなくってさぁー」
「あーっそうだった。スマホの未藍の字めっちゃくちゃだったね。……じゃなくってさぁ、修羅場よ、修・羅・場!!」
昨日の夕方、待ち合わせ場所に友達2人の姿はなかった。きっとあの後予定が変更になったんだろうと、未藍は駅前のアクセサリーショップをふらふら見ただけで帰宅していた。
「沙耶ちゃんに何かあったの?」
「新しく出来たカレシがね、年上の女と同棲してたらしいのぉ!」
「やっぱりそっち系の話ね。そのカレシ何歳よ!?」
「19だったかな?大学生なんだけど、昨日カレシのバイト先に2人で遊びに行ったら、その女が来てたみたいで『忘れ物よ』って財布を届けに来たんだよ。沙耶泣いちゃってさー。」
沙耶ちゃんのその手の話題は、中学の頃から何度も聞かされた。すぐ好きになって、付き合っているのか勘違いなのか分からないうちに、何度か破局(勝手に失恋)していた。
(今日は3人で失恋式か。)
「バイトねぇー。私もスマホ買い替えならバイトしなきゃ。」
「未藍つめたーい!沙耶の話だよー!今日はまた失恋式ね。ちゃんと来てね!あーそだ、バグのことクラスの詳しそうな男子に聞いてみるよ。」
「ありがと、ユウ。」
侑香は、商業科で普通科の未藍とは教室が反対の方向のため「またね」と言って別れた。
しかし、スマホの文字虫喰い現象はその日の午前のうちに、高校生や町の大人たちにも拡がり始めていた。
SNS上にも虫喰いについての書き込みが増え始め、電話会社に問い合わせた人の話によると、原因は分からないが一部の地域で起こっているバグのようだ、これは坂下町の怪現象だ!とまたたく間に噂は拡がっていった。
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