夏休み

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夏休み

 期末テスト期間も終わり、高校で初めての夏休みに入った。  ファミレスのアルバイトも決まり、侑香(ゆうか)沙耶(さや)と遊ぶ時間は減ったが「バイト先には顔を出すよ」と言ってくれた。   シフトは早朝6時からの3時間と、午後3時から6時までの3時間のどちらか。学生は主婦の人が担当しずらい時間帯を頼まれる。  スマホは叔母に前借りをして新しいのを買ってもらった。古くて小さなベビーピンクのスマホは大切に保管している。小学6年生のときに買ってもらって、母とやり取りをしたメールがたくさん残っている。  新しいスマホに替えてから、虫喰い現象は起きていなかった。  あの後もう一度、オカルト研究部を訪れたが資料室には鍵がかかっていて誰もいなかった。  そうこうしているうちに高校に入学して最初の期末テスト。中学の時より広い出題範囲を追いかけるのに手一杯で、虫喰い現象に囚われてばかりいられなかった。 「おはよう」  早朝シフトの男子大学生は、さわやかイケメンで好みのタイプだった。大学生というだけですごく大人に見える。 「おはようございます!」  未藍も元気に答える。 「未藍ちゃん頑張るね。朝起きるの大変でしょ?」 「だいぶ慣れました。聖矢さんこそ、バイトかけもちして大変じゃないんですか?」 「仕方ないよね、苦学生だから。今日も頑張りますかっ!」  見た目だけじゃなく性格も爽やかそうだ。  朝の町は、車通りもまばらで、空気がシャキっと澄んでいる。モーニングの準備をしたり、テーブルの足りない備品を整えているうちに、出社前のサラリーマンや、バリバリ働いていそうなお姉さんらで店内はいっぱいになる。朝のファミレスは活気があって嫌いじゃなかった。 「大塚さん、ちょっとシフトの相談なんだけど。」  朝のシフトが終わる頃、社員さんに声をかけられた。 「明日と明後日の2日間、午後のシフトを8時まで延長してくれないかな?本当は9時までお願いしたいんだけど、大塚さん高校生だしね。1人来られなくなっちゃってさ。ごめんね!」 と、手を合わせてお願いのポーズで頼まれた。 「わかりました」  シフトが多ければスマホ代だけじゃなく、お小遣いにもなる。女子高生は何かとお金がかかるのだ。 「未藍ちゃん、明日から午後シフトなの?ずっと朝のシフトならいいのに〜。残念!」と星矢さんが思わせぶりなことを言って通り過ぎた。 (私と一緒に働きたいってこと? ちょっと嬉しい。でもなんかチャラい?)  未藍の夏休みは充実し、バイトも楽しいと思えるようになっていた。  そして、忙しいと余計なことを考え過ぎずに済むのだ。
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