虫喰いのはじまり

1/1
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

虫喰いのはじまり

 その日は、とてもありふれた朝から始まった。  未藍(みあ)はスマホで友達2人と放課後の予定をやり取りしていた。高校生がよく利用する駅前のファーストフード店に16時50分集合。そこからお店をぶらぶらするか、そのまま店内でしゃべり続けるか、毎日そんな感じに過ごしていた。 『今日ゎ!相談があってねっ(絵文字) 他校に通う沙耶(さや)がスマホに書き込むと、 『なに なに?』 『まーさーかーっ!!??』  他の2人が次々と書き込む。 『それは会ってからのお楽しみねっ(ハート)  スタンプをペタペタとノリ良く貼って、それぞれの学校に向かった。   電車に乗って高校まで2駅。ホームに電車が入ってくるまで、並んでいる人の後方で続きを書き込もうとスマホを手にとり、未藍は自分の打った文字が所々欠けていることに気がついた。 (何これ? バグ? 壊れた??)  他の2人は次々と新しく書き込んでいるのに未藍には読めない。 『ごめん!バグってて読めない』  文字はまるで虫が喰べるように端から少しづつ欠けていき、今さっき未藍が書き込んだ文字はまだらに消え、 『ごめん!  って  めな 』としか読めない。 (とうとうスマホ壊れたかな?)  高校生が持つには少し子どもっぽい小さめのスマホを丁寧にカバンに入れ、仕方ないっ!とあきらめて学校に向かった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!