「今度、飲み行こうね!」

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「今度、飲み行こうね!」

バイト終わり、彼女は必ずそう言って去って行く。 「来週のサザエさんは〜」ばりに毎週毎週欠かさずに言ってくる。 雨の日も、雪の日も、彼女がメイクを忘れてマスクをしてた日も。 僕は「うん、絶対ね」と返して見送った後、「今度」の意味をスマホで調べる。 「最も近い将来・この次・次回」 今度という意味を考えれば考えるほど、わからなくなってくる。 近い将来なのに、どんどんどんどん遠ざかる気がして、先延ばしになる。 「今度の土曜日」や「今度の週末」となるだけで、ぐっと近くなるのに。 「また今度」や「今度いつ会えるのかな」というと、どこか永遠に会えないような気がしてくる。 僕はこの幻想のような「今度」を、少しでも現実のものにしたかった。 消えようとする彼女を引き留め、「あ、居酒屋のクーポン、今月までなんだけど、今月空いてる日ない?」と。 素晴らしい。 今月という残り4週間もある猶予期間を持たせながら、具体的な日にちをピンポイントで決めに行く作戦。 これで、この「今度」論争にも終止符が打たれることだろう。 彼女は「ちょっと待ってね」と手帳を開き、今月の予定を確認する。 そして、少しも悪びれた様子なく「あー、ごめんっ、今月は…全部無理かなあ…ごめんねー」と明るく断る。 僕もなるべく気丈に振る舞い、「全然いいよ!むしろごめん!」と何故か謝る。 離れ行く彼女は、7mくらい歩いて、思い出したかのように振り向く。 「また…今度ね!」 この論争が続く限り、2人の関係も途絶えることはない。そんな気がする。 もしかしたら、彼女も同じ気持ちなのかもしれない。 こいつ、おれのこと好きなんかな
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