「このワイドパンツ、買ったの!」

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「このワイドパンツ、買ったの!」

聞いてない と思うことが多々ある。 同じクラスの彼女は、開口一番の報告をマメにする。ホウレンソウを重んじる会社であれば褒められる行為であろう。 しかし、ここは会社でないし、僕は上司でもない。 あと、報告の内容が、どうでもいい。 前に会ったときは飼い犬のうんちが柔らかかった話をされたし、その前は燃えるゴミの日にミックスペーパーを捨ててしまった話をされた。 この話を僕にしたところで、どういう反応を求めているのだろうか。 妙絶な切り返しを期待してくれているのだろうか。 であれば、「そうなんだ」一辺倒で返し続ける僕などそろそろクビを切られるに違いない。 そう思ってから3ヶ月ほど経過したが、僕はまだクビになっていない。 彼女の報告を受ける上司(?)として週1ペースで仕事を担っている。 なんて簡単なお仕事だろう、と求人でも出して他の人に委託したい気持ちもあったが、受注が来るうちは全うしようと思う。 彼女は自分の身に起きたことを誰かに言いたくてたまらない。 これを言ったらどう思うかとか、何が起こるかとか、そんなことは関係ない。 とにかく誰かに言うことに重きを置いているのだ。 僕はその話自体に意味があるとは到底思えない。 そこから距離が縮まったことは一度もないのだから。 しかし、これは彼女なりのモーニングルーティーンなのだ。 朝起きる、顔を洗う、スムージーを飲む、僕に報告をする、朝ヨガをする、みたいな。 そんな欠かせない生活の一部にいることは誇らしいことであろう。 彼女の朝は、僕を見つけることから始まる。 この報告がなきゃ彼女の一日が成り立たないのだから。 そっと付け加える彼女。 「ユニクロでね」 「聞いてな…」 口に出てしまいそうになる本音を全力で抑え込み、愛想笑いする。 こいつ、おれのこと好きなんかな
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