「きみってサカナクションにいそうな顔してるよね」

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「きみってサカナクションにいそうな顔してるよね」

すぐに脳内で「新宝島」のイントロが流れ、MVが投影された。 踊っているメンバーの、誰のことであろうか。というか、半分くらい女だった気がするけれども。 この言葉の意味が、「カッコいい」か「カッコ悪い」かのどちらに分類されるかは、今後このバンギャと接していく上で非常に大切だ。 僕はYouTubeで、その真相に迫った。 驚くことに、全メンバーが、なんとも言えない。美男美女とは言えないが、ブ男ブ女でもない。 ひとり、サングラスかけてるし。 ただ、皆、印象深い見た目はしている。 ギターの人は渋い役者と言われても不思議ではないし、ベースの人はどこかの国でモデルができそうだし、キーボードの人は前職がデザイナーかもしれないし、ドラムの人は昨日居酒屋で会った気もする。 しかし、よくよく考えたら、よほどのファンでない限り、頭の中では「サカナクション=ボーカル」が描かれるはずだ。 ということは、ボーカルが僕に似ているということになる。 もう一度思い浮かべるが、やはり、なんとも言えない。 散々悩んだ挙句、この子がサカナクション好きなら僕に好意を抱いているに違いないという終着点に辿り着く。いや、終着点というより妥協点だ。5,000歩くらい譲って。 かくして、僕は彼女がサカナクションのファン(=サカナー)たる証拠を見つけるべく、彼女の周辺を探す。 ところが、死んだ魚の目のように見ていた僕に飛び込んできたのは、スマホに貼られたWANIMAのステッカーだった。 そう、サカナーではなく、ワニマーだったのだ。同じ水棲生物であるものの、生態は真逆(サカナーは夜行性で体温が低い、ワニマーは粗暴で体温ゲキアツのワンチャンラババンディッキーズダイバー族)なのである。 完敗だ…とうなだれる僕に「じゃあ」と手を振り、去っていく彼女。 そのとき、白いTシャツの背中に書かれた「SAKANACTION」の文字が瀕死の魚の目に映る。 まさかの逆転ホームランに、笑みは隠せず。 MVの、あのふざけた踊りで喜びをあらわしたかったが、ぐっと堪えて。 こいつ、おれのこと好きなんかな
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