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「きみ、そのリュックどこで買ったの?」
たしかに、少し派手かもしれない。
黒地ではあるものの、赤や黄色や紫で彩られたアルファベット達がさまざまな角度で散りばめられている。
もはや黒の余白はない。
新宿の百貨店で母親に買ってもらったこのリュックは、大学の進学祝いでもある。
それなりに高い値段がするが、このデザインなら大学で一目置かれると思い、反対する母の声を押し切り購入した。
キャンパスライフは想像していた通りのものだった。それなりに楽しく、それなりに友達もできて、それなりに忙しい日々を過ごすことができていた。
そんな中、リーディングの授業終わりにクラスの女子に言われた一言。
ん、どうしてそんなこと聞くのだろう。
このリュックの購入経路を聞くことで、何の得があるのだろう。
同じものが欲しいのか、リュックメーカーに興味があるのか。
それとも、僕に話しかけたい一心で、とりあえず目についた色物を利用したのか。
僕は、彼女の目を見た。
少し見上げた顔は、微笑みとも違う不思議な表情をしていた。
背負った荷物は急に重さが増したようで、熱が背中をあたためる。
火照った僕が解釈するのに、そう時間はかからなかった。
こいつ、おれのこと好きなんかな
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