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「知花、信じてもらえないかもしれないけど」
「うん、どうしたの?」
「昨日、10年後の俺が急に現れて、知花にこの手紙を渡してほしいって託された」
知花は口の前に両手を当てて、目をまん丸にして「まあ!」と声をあげた。もちろん10年後の俺が現れたなんて大嘘なんだけどさ。嘘なんか本当にしてしまえば問題ないだろ?
俺が昨日の夜せっせと書き上げたその手紙を知花は一生懸命読んでいる。「俺にも見せて」って揶揄ったけど、「これはわたし宛ての手紙だからダメ」って怒られた。別に内容知ってるからいいんだけど。
「なんて書いてあったの?」
しばらく黙々と読んでいた知花は、もう読み終わったはずなのにいつまでも手紙を手放さない。手紙で顔を覆うようにして、ちらちらと俺を見てくる。
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