ゴミ山に埋もれたビデオレター

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ゴミ山に埋もれたビデオレター

 見渡す限りの瓦礫とゴミ山が、暗雲の隙間から指す弱々しい陽光に照らされる。今日はいい天気だ。  ゴミ山といっても、埃っぽいだけで悪臭に満ちているわけではない。「もう腐るものもないせいだ」と、誰かが理由を教えてくれたのはいつだったか。その誰かも、すっかり骨となってそこら辺に埋まっているいるはずだ。  日に何度かゴミ山は雪崩のように崩れ、背筋の凍る音が響きわたる。そのときは手を止めて、耳を澄ます。瓦礫に飲まれた奴がいないか確認するためだ。わざわざ現場まで行って確認するほどの関係性ではない。飲まれた奴が助けを求められる程度に生き延びていて、その声を聞き取ったなら助ける。それがこの場所でのルール。  縁しかないモニター。骨組みだけの椅子。穴のあいたポリタンク。ガラス片に気を配りつつ、ジャンクを漁る。何かを見つけたくてやっているわけでなく、もはや惰性に近い。価値のあるジャンクを見つけたところで、最近は食い物と交換するのも難しくなってきている。
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