十年前 ①

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十年前 ①

「あの、そこ……私の席です」  恐る恐る話しかけると、斗真(とうま)くんは物凄く怖い顔で睨んできました。  学年で一番の不良として有名な、私とは正反対の人間です。  斗真くんの席は、私の一つ前。間違うのも仕方ないけれど、ここは怒らないで欲しいです。斗真くんの次なる反抗に備え、私は身構えました。 「あぁ、悪ィ」  けれど予想に反してあっさりと、席を退いてくれました。  良かった。そんなに悪い人じゃないのかも知れない。  それだけで好感が持てました。  全く、不良というのはお得です。
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