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10年後の私へ
「10年後の私へ、もう課長になりましたか?」
「こんなもん書いてる時点でなれる訳ねえだろ!!」
真夜中の十二時。
明日納期の仕事の残タスクを独りでもくもくもと消化するのに疲れた俺は、遺書も兼ねて10年後の自分に当てたメールを書いていた。
送信確認にBCCにも自分のメアド入れてんの。
ウケる。
とかやってたらいきなり後ろから怒鳴られた。
振り返ればいい感じに禿げたおっさん。
こんな奴、うちの会社にいたっけか。
「あ、貴方は?」
「時を越えてやってきた。私は未来のお前だよ、西田智彦」
「後藤ですけれど!?」
「婿入りしたんだよ!!」
婿入りしたのか。
まぁ、人生いろいろあるわな。
って、そうじゃねえ。
「えぇ!? 未来の俺!?」
「そうだ。お前が現実逃避しているからやって来た。そんなことやる暇があるなら仕事しろ」
「ちょっと待って、ひとつだけ確認してもいいですか?」
「なんだ」
「今の役職は?」
「係長だよ!!」
係長かぁ。
10年後の到達点が係長かぁ。
「なんかやる気が……」
「お前が真面目にやらないからだろ!!」
「……えぇ、けどぉ」
「そこまでだお前たち!!」
「「誰だ!!」」
また禿が増えた。
しかも見た顔の禿だ。
「貴方はいったい?」
「私は20年後のお前だ」
「やっぱり」
「そして10年後のお前でもある」
「10年後の俺」
20年後の俺にして、10年後の10年後の俺がきちゃったよ。
いや、そんなことより。
「「役職は!?」」
「お前たちが頑張ったことにより、なんとか部長だ」
「「やった!!」」
「ただし!! 会社がでかくなったから実務的に課長!! 部長であり課長でもある!!」
「「ズコー!!」」
なんだよそれ。
まぁ、会社がでかくなったら仕方ないな。
とか思ってたら。
「ふぉっふぉっふぉ、青くさいのう」
「「「誰だお前は!?」」」
「30年後のお前にして、10年後のお前の20年後のお前にしてい、20年後のお前の10年後のお前が、ワシじゃよ」
「「「よく禿ちゃびんから復活したな、毛根!!」」」
ふっさふっさの頭した爺が立っていた。
そして30年後の俺だった。
貫禄あるぅ。
これはワンチャンあるんじゃない。
「「「役職は!?」」」
「社長じゃよ」
「「「やったァー!!」」」
ついに俺は位人臣を極めきったのだ。
社長の座に登りつめたのだ。
あれ?
けど、なんでタイムリープを?
「まぁ、社長と言っても、自営業じゃがのう」
「「「……あっ(察し)」」」
「実質的には平じゃ」
平主任係長課長部長社長。
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