十一歳の君の思い出

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十一歳の君の思い出

 りあちゃんへ。  十一歳のお誕生日おめでとう。  今年のプレゼントに、みるくちゃんのお人形を送ります。  「こんなのほしくない!」ってりあちゃんは思うかもしれないけど、私はりあちゃんの本当の気持ちを大事にしてほしいから、この子を送ることにしました。  りあちゃんは、「どうして?」って思うかな。  実はね、私はこの間、おもちゃ売り場でりあちゃんがお人形さんをじいっと見ていたのを見つけたんだ。  あのとき、りあちゃんは本当にお人形さんが好きなんだなって、私は思った。  最近のりあちゃんは、大人みたいにしっかりした子になったよね。  背も伸びたし、着ている服も大人っぽくなった。  キーホルダーやポーチのセンスもいいし、本当にすてきな女の子になったと思うよ。  大人になったら、今よりももっとすてきな女性になると思う。  でもね、りあちゃん。  大きくなったからって、昔好きだったものをきらいになる必要なんてないんだよ。  小さい頃のりあちゃんはお人形遊びが大好きで、自分でお洋服を作ったり、一緒にお出かけしたり、本当に楽しそうだった。  でも最近は、「人形なんて子供っぽい」って言って、遊ばなくなったって聞いたよ。  だけど、私はわかっているつもりなんだ。  りあちゃんは、本当は今でもお人形さんが大好きだってことも。  大きくなったらお人形遊びはやめないといけないから、きらいになったようなふりをしていることも。  わかっているつもりだよ。  私も、そうだったからね。  でもね、りあちゃん。  お人形遊びをやめなきゃいけないなんて、思わなくていいんだよ。  もし周りの子に「子供っぽい」って言われたとしても、気にしなくていい。  だって、りあちゃんは心からお人形さんのことが大好きなんだから。  ずっと大事にしていためぐちゃんを他の子にあげてしまったと聞いたので、私から、新しいお友達のみるくちゃんを送ります。  お人形さんと遊ぶ時間はね、ただの『遊ぶ時間』じゃないんだよ。  お人形さんは、りあちゃんにとって大切な友達。  その友達と一緒に過ごした時間は、大人になってもずっと忘れない、大切な思い出になるから、恥ずかしいなんて思わないで。  これからみるくちゃんと一緒に過ごす日々が、十年後のりあちゃんにとって大切な思い出になることを願っています。  今度はみるくちゃんも連れて、うちに遊びに来てね。  今でもお人形さんが大好きな、叔母さんより。
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