十年後の自分から手紙が届いたのですが、正直やばすぎて見なかったことにしたいです。

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

十年後の自分から手紙が届いたのですが、正直やばすぎて見なかったことにしたいです。

 どうやら十年後の世界では、ナントカ鉱石とかすごいものが発見されたせいで、とっても科学が進歩したらしい。  そして、その技術を使って、過去の世界にメッセージを送れるようになった、らしい。  らしい、らしいばかりなのは私も未だに半信半疑だからだ。私の手元には、十年後の私から届いたと思しき手紙と写真がある。隣では私の夫が、同じように届けられた手紙を見て子供のように喜んでいた。 「ねーねーカホコ!凄いよねこれ、凄いよね!俺、十年後の世界では社長さんになってるんだって!事業も成功して、お金持ちになってるんだってさ!嬉しいよね!」 「そ、そうね」 「今やってる仕事も無駄にはならないんだってさ。すごくやる気出てきたぞ!これからもカホコや子供達を食べさせていくために、俺本気で頑張っちゃうよ!」  長身でイケメン、爽やかで無邪気な自慢の夫は。まるで少年のようにキラキラした笑顔を私に向けて来たのだった。  私はそれに対し、油が切れたブリキ人形のようにぎこちなく頷くしかない。彼の話が本当ならば、これからの私達の生活は安泰なのだろう。今は苦しい生活も、きっと未来の世界では安定していて、子供達を無事に学校に入れさせてやることもできているということらしい。それは素直に嬉しい――嬉しいのだが。 ――い、言えない。ど、どうすりゃいいのよこれぇ……!  十年後からの私の手紙には、こう書かれていたのだった。 『十年後の私へ。  写真を同封します。それでいろいろ察してください、っていうかマジで察しろ。  十年後のあんたの旦那は、幸せ太りがやばいことになってます。イケメンの面影なくなりすぎてて私は本気で泣きたいです。  今からでもいいので、全力でダイエットの準備させといてください。ソファーに座ったままお尻が抜けなくなる男に変貌する、その前に……』
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!