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推しであるゆうまくんと出会ったのは、動画配信サイトでやっていたドラマがきっかけだった。その日、私はアルバイトでいちゃもんをつけてくるクレーマーに当たり、心身共々疲れ果てていた。帰宅して夕飯を食べながらなんとなくドラマを流し見ていると、ダークなオーラを身にまとった青年が登場した。
「お前らの愛を奪ってやるよ」
セクシーな雰囲気と低音ボイス。うわぁ……と、私の喉の奥からため息がこぼれた。恋に落ちた瞬間だった。
大好物のハンバーグもそっちのけで、タブレット画面を食い入るように見つめた。
その日から私は、ゆうまくんに関する情報をネットで集め、ドラマや映画、舞台、映画など出演しているものを片っ端からチェックした。演じるキャラはセクシーな悪役が多かった。「そんなんで俺に勝てるとでも思っているのか?」、「俺の本気、見せてやるよ」。彼の放つ台詞が胸に突き刺さる。私はどんどん彼の魅力にハマっていった。
「ゆうまくんが出演するイベントがあるらしい」
オタク仲間が教えてくれた情報だ。私の友人あいりは漫画オタクで、今度お気に入りの漫画がドラマ化するにあたり、ゆうまくんが主人公のライバル役に抜擢されたらしい。しかも、あいりはチケットを2枚取っていると言う。ぜひとも、ご一緒させていただきたい。
でも……。
「推しの視界に入りたくない。私という存在を推しに見られたくない」
今までも、ゆうまくん以外の推しのイベントに参加するチャンスは何度かあった。でも、その度に思ってしまうのだ。彼らみたいなキラキラした神のような存在の人達の視界に、私みたいなブスが入りたくない、と。
「言ってることはわかるけどさ、別にブスってほどじゃなくね?」
あいりが笑った。
「でも、ニキビが気になる……。推しの顔面高解像度だから、私みたいな低解像度の人間がイベントなんかに参加したら、ファンの民度が下がる……」
「じゃあ、ニキビ直せば良くね? ちゃんと毎日スキンケアすれば肌もつるつるになるって」
「でも……」
「いいから、いいから。イベント一緒に行こうよ。顔面国宝の推しを間近で見られるチャンスだよ」
「……うん」
こうして、私のスキンケア合宿は始まったのだった。
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