推しのイベントに参加したい

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 合宿といっても、あいりの家に泊まったとかそういうことではなく、あいりがSNSで共有してくれた美容情報を私がチェックして、実践するという内容だった。  まず、私のニキビの原因はチョコレートの食べ過ぎと、スキンケアを怠っていることだった。私は朝寝坊すると、洗顔をちゃんとしない日がある。3回ぐらい顔にお湯をかけて、はい、終了って感じの日があるのだ(あいりはこれを「めちゃくちゃありえない」と言った)。まずはそこからと、朝忙しくてもちゃんと洗顔フォームで顔を洗って、洗顔後は化粧水をつけるようにした。最初はめんどくさかったけど、推しのすべすべ肌を思い出すと自然と当然の行為のように思えてきた。  甘いものの食べ過ぎは、ストレスからだった。イライラしてしまうと、ついチョコレートや甘いお菓子に手を伸ばしてしまう。イライラしない対策として、嫌なことがあったら推しの顔面を思い浮かべて、なるべくイライラしないよう心がけた。 「1番の化粧品は、推しにときめくことだよ」  なんて、あいりがクサいセリフを言う。恋をすると女の子はきれいになる。推しにときめくことでドキドキして、新陳代謝が活発になり、肌がきれいになるそうだ。  何言ってるんだ、こいつ。そう思いながらも、この「推しにときめく」というのは勝手に毎日やってしまう行為だ。ドラマの推しの出演するシーンを何回も観て、登場する度にときめいてしまう。意識しなくても実践できた。  そうこうしている間に、イベントまでの数週間はあっという間に過ぎ去った。たった数週間できれいになれるわけないじゃんと思っていた。しかし、鏡を見てびっくりした。  赤く腫れていたニキビがない。何歳か若返ったような肌になっていた。 「最近、キレイになった?」  鏡の中の私に声を掛ける。鏡に映った私はにっこりと微笑んだ。  そして、イベント当日。 「ゆうまく〜ん!!」  なんと、私の持っている「バーン撃って」と書かれたうちわに、ゆうまくんが反応してくれたのだ。 「い、今……推しと目が合った……。死んでしまう……」  見事、推しに存在を認知されてしまった私は、イベント会場で昇天してしまったのだった。
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