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Side.tomoya
物心ついた時から僕の傍には典夫(のりお)お兄ちゃんがいてくれた。
*
「お兄ちゃん、僕おっきくなってもずっとお兄ちゃんと一緒にいる! ねー、だめ? お兄ちゃん」
「いいよ、知矢(ともや)ずっとずーっと一緒にいよう。いつまでも」
「ほんとに? お兄ちゃん」
「うん。指切りしようか、知矢」
「うんっ!」
――指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます――
「お兄ちゃん、だーい好き!」
*
初夏の明るい日差しが遮光カーテンの隙間から差し込んで、佐伯(さえき)知矢は目を覚ました。
……?
見慣れぬ天井と見慣れぬ部屋に、寝起きの知矢は刹那自分がどこにいるのか分からなかった。
だがやがて寝ぼけた頭がクリアになって来るに従い記憶が呼び起こされる。
「そうだー。昨日、お兄ちゃんと新しいマンションへ引っ越して来たんだっけ……」
なんともくすぐったい気持ちで呟き、ちらりと隣を見ると、そこには実の兄で恋人でもある佐伯典夫が規則正しい寝息を立てて眠っている。
「これからお兄ちゃんと二人きりの新生活が始まるんだ……」
典夫と知矢、同じ父と母を持つ二人が最大の禁忌を犯し、恋人関係になったのは今から三年と少し前のことだった。
そして現在、典夫は社会人二年生、知矢は大学二年生である。
典夫も仕事に慣れたことだし、二人でしていた貯金も目標額に達したので、あまり良い顔をしない両親を押し切る形で実家を出て、一緒に暮らすことにしたのだ。
実の兄弟ながら自分とはあまり似ていない兄の少し冷たげな端整な顔をうっとりと見つめながら、しばし知矢は感慨にふける。
こんなに幸せでいいのかな、僕。ねーお兄ちゃん。
これからは誰にも気兼ねすることなく、兄とくっついていられるし、一緒にいられる時間も増えるだろう。
知矢はふふ、と小さく幸せに微笑み、兄の肩口に頬を摺り寄せる。
「……ん……知矢……?」
典夫が小さく身じろぎをして、切れ長の目がゆっくりと開いていく。
「……おはよ、お兄ちゃん」
「……ん……おはよ、知矢……」
まだ眠そうな兄。
こんな無防備な顔を見れるのは自分だけなのだと思うと、知矢はたまらない幸福感を覚える。
そうこうしているうちにすっきりと目が覚めたのか、典夫が知矢の体を強く抱きしめてきた。
「うわ。お兄ちゃん、なに? 苦しいよ」
「だって昨夜は引っ越しで忙しくて、おまえのこと抱けなかったんだもん」
「まだ全然荷物片付いてないよ? お兄ちゃん」
あちらこちらに置かれている段ボール箱を見ながら呟くと、
「ゆっくり片付けて行けばいいよ。それよりせっかくの日曜日なんだし、知矢とイチャイチャしたい」
そう言って典夫は知矢の額や頬、鼻の頭、そして唇にキスの雨を降らしてくる。
「やだ、お兄ちゃん。くすぐったいよ。……っあ……」
不意に知矢の声が跳ね上がる。
典夫がキスを深めながら、知矢の乳首をその細く長い指で摘みあげたからだ。
「ほんとに感じやすいな、おまえの体は……」
キスの合間に囁かれる兄の声は扇情的でたまらなくエロい。
「あっ……や……やっ……」
朝には似つかわしくない激しいキスをされ、乳首をいじくりまわされ、苦しい息遣いのもと知矢が甘い声を漏らすと、典夫の冷たげな美貌が甘くとろける。
唾液を滴らせて、典夫の唇が知矢の唇から離れて行き、そのまま下へと滑っていく。
乳首をじっくりと愛され、華奢な体のラインに沿って典夫の唇はどんどん下へと降りていき、やがて知矢の昂ぶりにたどり着く。
「やだっ……お兄ちゃん……」
もう数えきれないくらいそこを唇で愛されているというのに、知矢はいつまで経ってもその行為をされるのが恥ずかしくてたまらない。
「知矢……かわいいよ……」
知矢の羞恥の気持ちを充分に知っていながら、いや、知っているからこそ典夫は執拗にそしていやらしくソレを唇で愛する。
根元から先っぽにかけて舌でねっとりと舐めまわしたり、喉の奥でグッと締め付けるようにしたりして……。
その気持ちよさに知矢の腰はピクピクと跳ねる。
「あっ、ああ……も、出る……出るから……お兄ちゃ……っあ……」
ひときわ高い嬌声を引っ越して来たばかりの部屋へと響かせ、知矢は典夫の口内へ愛液を放った。
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