雨のやさしさ

2/8
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
泣きたいよ……。でも泣けない。するとふと思った。 雨は私の気持ちを代弁してくれているのかな……? ふとんを抜けて窓際まで走った。窓には大粒の雨がびっしり。暗い外。暗い内。私の心にどしゃ降りの雨が降り注ぐ。あの時の傷にしみて痛い。 心の雨を流して、雨とともに泣いた。辛いよ。苦しいよ。 ただ窓に叩きつけられる雨を見て声を上げて泣いた。こんなことは久しぶりだった。ああ、雨も痛いだろう。降る場所を選べない雨。母なる海や川に降りたかったかもしれない。道に降って次の朝、小さな子どもに長靴で遊んでもらいたかったかもしれない。 ごめんね。 降る場所が私のアパートの窓で。晴れたら蒸発する短い命。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!