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近鉄名古屋線江軒田駅。ベッドタウンにほど近いその駅は18時を過ぎると帰途に着く人々で賑わう。その店は、駅前通りを抜け、閑静な住宅街に差し掛かろうとする場所にひっそりと佇んでいた。
看板もなく、一見すると普通の民家だ。トタン張りに瓦屋根、玄関ポーチは雑なコンクリ洗い出し。築後50年は経過しているであろう平屋の佇まいはどこからどうみても一人住まいの高齢者が細々と暮らしている風情で、とても店舗には見えない。
玄関のセンサーライトが反応して我々を照らすのと同時に、
「おかえりなさい」
今どき懐かしいアルミ格子に摺りガラスの引き戸がガラリと開き、束ね髪にエプロン姿の妙齢の女性が顔を出した。江軒田とし子さん(42)、この会員制食堂WaGa家(わがや)江軒田店のいわば女将的な存在だ。
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