10年前の記憶

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10年前の記憶

 10年前、僕は中学生だった。25歳になった僕は、今懐かしい校舎の見える中庭にいる。 「よし、掘るか!」  当時、同じクラスだった木嶋が声を上げた。  ちょうど10年前に、この桜木の下にタイムカプセルを埋めた。そして今日、それを掘り起こし、当時埋めた物を確認するのだ。  僕は集団の後方からそれを見守った。いったい何を埋めたんだっけ?それすらはっきりと思い出せない。この10年の間に様々なことがあった。中学卒業後、僕は高校で勉学に励み、トップの成績で東京の大学へ進学した。今は大学で学んだ化学の技能を活かした仕事に就いている。  高校、大学での思い出はたくさんあるが、中学の頃の思い出はあまりない。中学までの僕は目立たない存在で、牛乳瓶の底のようなぶ厚い眼鏡をかけた地味な生徒だった。勉強はそこそこできたが、運動はからっきしダメ。当然、彼女なんかできるはずもなく、陰に居続けた3年間だった。
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