エブリスタ10年ラジオ

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エブリスタ10年ラジオ

「早く帰らねば!『福のラジオ』なんか聞いてられないぜ」 土曜日の昼下がり。私は仕事場から自宅へ車を運転していた。 すると前を走る高齢者のボコボコの軽自動車がトロトロ走っていた。 「くそー」 しかし私の車は高級車だった。この車で後ろを走るだけで煽っているような威圧感を与えてしまうので、離れて走るのであった。 「ああ?もう14時じゃん。いいや、スマホで」 こうして私は車の運転をしながら聴くことにした。 この日を一日千秋の思いで楽しみにしていたエブリスタの公開ラジオの日だった。早速楽しげな会話が聞こえてきた。 『皆さんもTwitterで参加ください』 「運転しているからごめんなさいね」 私はこうして信号待ちにラジオに耳を澄ませた。 素人ばかりと思っていたが、慣れたアナウンスのお姉さんがスラスラと話し男性を紹介した。 『取締役の「さかいふうた」です』 「どういう字なんだろう。後で調べよう」 名前からして自分よりも若そうな名前に私は渋滞の道をさらにラジオを聴いていた。 『松田です。コマコマとやっております』 「なんだろうな、コマコマって。きっと普段からこう話すんだろうな」 キビキビなお姉さんの話ぶりに、普段年寄りと仕事をしている私は面白くなっていた。 『エブリスタは……スターをもらえるのが1.36倍増えました……1.41倍増え、三分の1がどうのこうの……』 彼の数字のオンパレードに私はため息をついた。 「この取締役さんは数字にうるさいな。松田さんも大変だな……」 大雑把な文系肌の私は彼のデータ分析に感心していた。 しかし今度。ラジオでは松田女史が弾丸トークをかましてきた。 『1スターが10スターに?スペシャルスターです!』 『松田の説明通りです。スターを投げて欲しいですね』 「ふーん。スターって投げるんだな」 薄情者の私はスターに関しては間違って押したとか、本当に面白いと思った時しかスターを押していなかった。しかし社長の投げる、という話に納得していた。 今度は松田女史がカルーセルがどうとか言っていた。 「カルーセル?なんだ。カルーセル麻紀しか知らんぞ?」 昭和の私はこの辺でついていけなくなっていた。でも家に到着していた。 「よっしゃ。家で聴くぞ」 10年前の私はまだエブリスタを知らずに子育てをしていた。しかし10年後には夢を叶えたいと一念発起し、小説を書くようになっていた。 そしてこのラジオにてみんなも同じあたたかい気持ちで10年を過ごしたと知った。 「みんな一緒だね。さて。なんだ妄想コンテスト?お題はなんだ?」 仕事帰りの私は手洗いをしエプロンをつけたままIpadに向かった。 11年目の彼女は今日も楽しく物語の世界に入っていくのだった。 fin 2020年エブリスタ企画『みんな10周年』を掲載
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