孤独と地蔵

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「もう十年になります」  問わず語りに地蔵がそう言った。だけど、別に驚くことはない。地蔵が言ったように、もう十年の付き合いだ。 「梅雨だというのによく晴れた日のことでした。まるで今日みたいな」 「そうだな」 「あまりに悲しい顔をしているのを見て、声をかけずにはいられなかったのです」  声をかけられた方はたまったものじゃない。驚き腰を抜かしたのは、もはやいい思い出だ。 「一人になり寂しかったでしょう」  地蔵は表情を変えないが、憐れんでくれているのは分かった。 「いや、辛かったのは向こうの方だと思うよ」  私はふと空を見上げる。梢の隙間からチラチラと太陽の陽が輝いていた。少し灰色がかった雲が、青い空との境界線をはっきり分けている。まるで、あの日から変わったすべてのようだ。  結婚式を翌月に控えていた。彼女のお腹の中には子どももいた。名前だって決まっていたのだ。新居も見つけ、家族三人での幸せな日々が始まるのだと思っていた。  ――それなのに。  不慮の事故だった。大型トラックと乗用車が三台、それに通行人も絡んだ悲惨な事故。犠牲者は十人にも及んだ。
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