孤独と地蔵

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 私は泣いた。涙が枯れるまで泣いた。どれだけ語りかけても、言葉を返してくれない彼女を思い泣いた。  失ったものは戻らないと分かっている。それがさらに悲しいのだ。 「おや、今年も来てくれたようですよ」  地蔵の言葉に、私は墓地の方へ視線を向ける。長い髪の女性が、子どもを連れて墓石の前に立っていた。地蔵に礼を言い、私は彼女たちの方へ向かう。 「あなた、もう十年ですね。この子もすっかり大きくなりました」  少し老けた彼女の頬に、私は手を添えた。温もりを感じない手の先は、花を生けようと屈んだ彼女の柔い肌をすり抜ける。 「私は元気です。この子がもっと大きくなるまでそっちへは行けないけど。ずっと見守ってくれてるといいな」  夏の装いをした陽の光が、長い影を石畳の上に二つ伸ばした。痛みも温もりも感じないのに、ひどく切ないのはどうしてだろう。   大きくなった息子を抱きしめることも、愛する彼女を守ってやることも出来ない。  それなのに、私は何のためにここにいるのだろうか。地蔵に問いかけたのは、いつのことだったか。
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