ミラクル・パラドックス

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★2020年 十年後の君へ。小学生の時からメカオタクだった君は最高の仕事に就いたと思ったよね。空飛ぶ自動車の開発なんてやりたくたってできるもんじゃない。みんな驚いていたけど、僕は未来が見えているからむしろ当然って思えたけど。でもその仕事、結局十年で頓挫するんだよ。そろそろダメになった頃かな?まあ、考えてもみなよ。「バックトゥザフーチャー」では三十年後の世界、2015年に車は空を飛ぶって予想していたのにいまだにその気配はない。だから今から十年後に車が空を飛ぶはずはないでしょ。僕は未来が見えているから確信してるけど。だからこの手紙を渡す時、「十年たったら読んで」って言ったのは、僕の予知能力を信じてもらう為でもあったんだ。ただね、そういう特別な能力を持ってしまうと、見たくない未来が見て見えてしまうことがあるんだ。そのことがあまりに苦しいのだと、僕は最後に唯一の友人だった君に伝えたかったんだ。さようなら。 ★2030年 十年前のお前へ。俺は薄々感じていた。お前に特別な能力があることを。実はお前から手紙を受け取ってから数年が経ったある日、そこにはお前が見た未来が書かれているんじゃないかと思い俺は封筒を開いたんだ。そしてお前の言いたかったこと、いや、予知の内容についてもふに落ちた。そこで俺はお前を信じ、開発の方向性を修正した。それが良かったみたいだ。今や俺が開発した「ランディング・セル」というランドセル型のドローンは一人に一台が常識となっている。自動車免許と並んで飛翔機免許ってものもできたんだぞ。常識なんて十年すれば変わるもんだな。それに、お前の予知で変わった未来はさすがに予知できなかっただろう。お前は未来が見えることが理由で悲観し自分自身を死に追いやったが、未来は変えられるんだって知っていたらそんなことはしなかっただろうな。今となっては時すでに遅いだろうがな。ただ、もしかしたら―― ★2020年 「ありがとう、僕を信じて可能性に邁進してくれた君はすごいとしか言いようがない。まさか君が僕の為にタイムマシンを開発し、未来は変えられると僕に伝えに来たなんて、本当に夢みたいだ」 僕が心の底から彼に感謝の念を伝えると、彼は露骨に眉根を寄せた。 「はぁ?俺がタイムマシン?こっちは空飛ぶ自動車の開発で忙しいんだよ。で、この前の手紙は何が書いてあるんだ?十年待てねーよ」 まあ無理もない、今は。 (了)
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