進路相談

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 十年も経てば、ものの価値は往々にして変わる。  たとえば職業。  十年前に、なりたい職業に「ユーチューバー」がランキング入りするなど誰が想像できただろうか。「eスポーツ」ともてはやされ、プロのゲーマーが誕生するなど考えられただろうか。  この先、何が、どういう価値をもつのか、正確に予想しうることは難しい。 「だから、進路指導になりたくなかったんだよ」  高校進路指導担当教師の樋口は進路指導室で大量の資料を前に頭を抱え込んでいた。今から、生徒との面談だ。  今や受験は早期着手が合否の重要なカギ。生徒達は入学してすぐに進路選択。2年時までに必履修を終え、3年時には受験に向けてまっしぐらのレールに乗らねばならない。  そして、教師は乗せねばならない。 (それが大変なんだよ……)  樋口は思う。 (相手は機械じゃないんだから、そう簡単にこっちの思う方向に動いてくれやしないんだって)  ましてや相手は、思春期まっただ中。  大人の言うことは素直に聞きたくない高校生なのだから。
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