10年後の君へ

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「なんで、こんなに作るかな」 中学生になって、自分でも戸惑うほどイライラするようになった。 それは家族に対してとくに酷く、普通なら喜ばれる筈の、食卓に載った沢山のご馳走までもがその対象だ。 「太るからサラダだけにしてって言ってるじゃん」 母はその場では「わかったよ~」と言っておいて、そのあとも台所に立ちいそいそと常備菜を作るのだ。 お風呂あがり冷蔵庫に麦茶を取りに行くと、トントントントン、と包丁の音が聞こえて、イライラがわき上がる。 この人は、四六時中料理をしているんじゃないだろうか。 麦茶を飲みながら手元を覗き込む。 普段おっとりとしてどこか抜けている母からは考えられない手際の良さだった。 私に気付くと、「お腹空いた?」とにこにこ聞いてくる。 食べたばっかりじゃん、バカなの。
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