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大学2年になった年のある日、実家に一通のハガキが届いた。ひらがなばかりが目立つ鉛筆書きの、見覚えがあるー いや、見慣れたあまり上手でない子どもの字のものだ。 見た瞬間思い出した。これは昔、10歳の子供だった僕が将来の僕に向けて出したものだ— 10歳の時の、2分の1成人式というイベントで「10年後の自分に向けてハガキを書きましょう」という企画があって、その時にみんなで将来の夢をつづったのだ。 それから10年、タイムカプセルのように保存されていたものが開封され、改めて投函されたものが現在の僕のもとに届いたのだった。 「10年後のぼくへ ぼくのゆめは宇宙飛行士になることです。 はずかしくて友だちには言ってませんが、小さなときにテレビでロケットの打ち上げのようすを見てから、ずっとあれにのって宇宙にいきたいと思ってました。 そのためににがてな理科のべんきょうもがんばっています。 宇宙飛行士になるのはたいへんだけど、もっとがんばってきっとなります。 10年後のぼくは、いまもがんばっていますか?」 —もしも、過去に手紙が出せるならあの時のぼくに返事を書いて伝えたい。 「僕は、今、大学で先生になるための勉強をしています。中学の時にちょっとしたことで学校に行けなくなってしまって、それでも先生や友達に助けてもらって、もう一度通えるようになりました。 それから、今度は先生として子ども達を教えていきたいと考えるようになって、大学の教育学部というところに進みました。 君と同じで星を見るのはずっと好きで、高校では天文部の仲間といっしょに夜空を観測(かんそく)したのは楽しかったし、いい思い出です。 まだ途中ですが、先生になれたら理科を教えられたらうれしいですね。 なりたいものは変わったけど、今もがんばっていますよ」 宇宙ほど遠くはないけど、手の届くもっと身近な世界は10歳の僕が思うよりもずっとずっと広かったよ、と。                  完
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