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十年前のみんなへ
幼馴染で彼氏の優太から電話が掛かってきた。
「タイムカプセルを回収するから、由美も小学校に来いよ」
「タイムカプセルは成人式に掘り出す予定でしょ」
私は十七歳だから、三年後のはずだ。
「廃校になるから回収するんだよ」
「そうなの?」
知らなかった。でも、別に驚く程では無い。私が通ってた頃ですら四人しかいなかった田舎の小学校だから。
「貴也と歩美は来れないらしいから、お前だけでも早く来いよ」
正直、面倒だ。タイムカプセルなんてどうでもいいから、せっかくの休日をゴロゴロして過ごしたい。貴也と歩美も同じ気持ちなのだろう。
そう言えば、何を入れたっけ? みんなで十年後の自分たちに宛てた手紙を書いた気がする。その内容は、確か……
『十年後の私へ。貴也くんのお嫁さんに なれましたか? 貴也くん、大好き』
……
……
記憶が鮮明に蘇り、全身から汗が吹き出す。あの頃は貴也の事が好きだったんだ。
優太は嫉妬深く、特に貴也へのライバル心を持っている。子供の頃の事だとしても、これを見られるのは不味い。
私はメモ用紙とペンを手に取り、庭に放置してあるスコップを握りしめ駆け出した。
「由美、早かったな。みんなバラバラに埋めたから、どこにあるのか分からないんだ。手当り次第、掘り返してみよう」
「そっ、そうだね」
優太より先にタイムカプセルを見つけ、回収しなければならない。
女子高生の私が凄まじい速さで掘りまくる。
暫くして赤いカプセルが見つかった。私のカプセルはピンク。これは歩美のだ。何が書いてあるのだろう?
『 貴也くん、大好き! いつまでも一緒だよ』
お前もか! いつまでもどころか、中学生になった瞬間から別の男に惚れてただろ!?
気を取り直して掘りまくる。すると、青いカプセルが出てきた。貴也のだ。
『俺は優太がいないとダメなんだ。ずっと一緒たぜ 』
……BのLなのか?
いや、普通に考えれば友情だろう。
よく見ると、優太の黒いカプセルも近くに埋められている。
『 いつまでも、貴也と一緒にいたい』
両思い!? いつも秘密基地で遊んでたらしいけど、何をしてたんだ!?
その後、無事に私のカプセルを見つけ、当たり障りの無い文章へとすり替えた。
「お嫁さんになりたい。可愛いじゃないか」
「そうね」
「他のカプセルは見つからなかったな」
「残念ね……」
こうして、多くの謎を残しながら未来への手紙はゴミ箱へ捨てられた。
そして、十年前の優太たちを思い出して願う。
真実を教えてくださいと……
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