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十年後
「ねえ、お父さん。この子、ちょび太にそっくりよね?」
妻が犬を拾ってきた。
「ほんとだ。毛の感じも真っ黒の鼻もくりくりの目も同じだな」
サイドボードの上に飾ってある、ちょび太の写真と何度も見比べる。
「別れが辛いからもう二度と犬は飼わないと誓ったのに……。ずっとついて来るの。たまらなくなって……」と妻は目を真っ赤にしている。
ノリが就職し家を出て、二人だけの生活にやっと慣れたところだ。
「おまえ、ちょび太の生まれ変わりか?」
賢そうにお座りして、つぶらな瞳で私の顔をじーっと見つめる。
何か言いたそうだ。
「よし、今日からお前はちょび太だ。うちの子だ。よく帰ってきたな!」
「ありがとう! お父さん! よかったね、ちょび太!」
ちょび太は私と妻に撫でられると、尻尾をぶんぶん振って飛びついてくる。
――ただいま、お父さん、お母さん――
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