地球最期のplanetarium

2/3
前へ
/3ページ
次へ
十年前に死んだ君へ。 今、十年後の世界がどうなっているか、 どこかで見ていますか。 星に手が届くこと。 月から青い地球を眺めること。 僕らが結婚すること。 君が望んだ事が何も叶わず最期を迎えた住処(地球)を見た君は、 どんな顔をしているのだろう。 僕は天を仰ぐ。 迫る星は今にも手に届きそうな距離まで僕らを追いつめている。 これも宇宙からの試練だと僕は諦める。 十年前、流星群が見たいんだと彼女は言った。満月の夜だった。 十年後、今なら見せてやるよと僕は言う。 でもこれも、もう意味はない。 全てが過去形になるこの世界で、今更僕が現在を残そうったって、無意味な事だ。 僕は天を仰いだ。 満月の夜だったはずなのに、月の原型はもう無い。 でも、君の元に行けるならまぁいいか、と微笑した。 君に逢えたらどうしようか。 お待たせって言おう。 いっぱい抱きしめてやろう。 原型を留めないその「何処か」で、 二人でプラネタリウムでも創ろうか。 未来を思い浮かべながら目を瞑る。 夏の風が心地良くて、それから―――…、
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加