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十年前に死んだ君へ。
今、十年後の世界がどうなっているか、
どこかで見ていますか。
星に手が届くこと。
月から青い地球を眺めること。
僕らが結婚すること。
君が望んだ事が何も叶わず最期を迎えた住処を見た君は、
どんな顔をしているのだろう。
僕は天を仰ぐ。
迫る星は今にも手に届きそうな距離まで僕らを追いつめている。
これも宇宙からの試練だと僕は諦める。
十年前、流星群が見たいんだと彼女は言った。満月の夜だった。
十年後、今なら見せてやるよと僕は言う。
でもこれも、もう意味はない。
全てが過去形になるこの世界で、今更僕が現在を残そうったって、無意味な事だ。
僕は天を仰いだ。
満月の夜だったはずなのに、月の原型はもう無い。
でも、君の元に行けるならまぁいいか、と微笑した。
君に逢えたらどうしようか。
お待たせって言おう。
いっぱい抱きしめてやろう。
原型を留めないその「何処か」で、
二人でプラネタリウムでも創ろうか。
未来を思い浮かべながら目を瞑る。
夏の風が心地良くて、それから―――…、
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