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地球最期のplanetarium
十年後、星に手が届くようになるかもしれない。
と、右手を夜空にかざして彼女は言った。
そんな訳はない、と僕は言う。
途端に彼女は膨れて、
じゃあ、十年後は私達月から青い地球を見てるかもね。
と、僕を見ながら言った。
さあね、と僕は言う。
眼下にある街並みは赤く黄色くそして黒い。
空に浮かぶ無数の星の欠片が泳いでは消えていく。
もし私達が十年前に産まれてたら、今頃結婚してたかもね。
と、今度は少し含み笑いをして彼女は言った。
そうかもね、と聞こえないくらいの小さな声で僕は返す。
煌々と夜空を照らす月をのんびり眺めていたあの日が、
今ではまるで魔法の夜のようだ、と僕は言う。
いつまで待っても、静寂が返ってくる。
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