【ショート・ショート】10年先からメッセージ

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『俺は、10年後のお前だ』 ある日、こんな奇妙なメッセージがアプリを通じて俺のスマートフォンに送られてきた。 真偽の程は分からない。 しかし、男が続けて送ってきたメッセージによれば、10年後の世界では特殊なアプリを使えば、過去の自分にメッセージを送る事が可能なのだそうだ。 『今年の宝塚記念は、○─○─○だ』 10年後の俺は、今週開催予定の競馬の当たり馬券の結果を送信してきた。 まるで、映画のような展開だが、送られてきたメッセージ通りに馬券を買ってみたら、見事に的中した。 その後、「10年後の俺」は、競馬や競艇など開催予定の大レースの結果を毎週送信し続け、そしてその結果に基づいて馬券や舟券を購入した俺は、ちょっとした小金持ちとなった。 こうなると、後輩に焼き肉をおごったり、可愛い女の子がいる店に毎日通ったりと、散財しまくるのだが、一ヶ月が経った時点で急にメッセージは送信されなくなった。 人生におけるビッグボーナスが終わり、金銭感覚が狂った結果、俺のその後の人生は悲惨の一言であった。 そうこうしている内に、10年が経った。 既に借金まみれになり、いかがわしい人種とばかり付き合ってきた俺は、とあるアプリを紹介された。 何でも、このアプリは過去の自分にメッセージを送信出来るアプリなのだそうだ。 人生における一発逆転を願っていた俺は、過去の自分に大金を掴んで欲しいという願いから、過去に行われた競馬や競艇の結果を毎週スマートフォンを通じて送信し続けた。 すると、一ヶ月後にどう見てもカタギとは言えないお兄さんが数人、俺の前に現れた。 「ウチのアプリの利用規約に違反しているので、違約金を払って欲しいんですよ。 あと、メッセージを一度送信するごとに99800円の使用料が発生するんですが」 ワンクリック詐欺の文言だと思ってこれまで無視していたのだが、お兄さんの話によると、どうも本当であるらしい。 「内臓」「落とし前」という単語を冷ややかに告げられた後、俺は怖いお兄さん達に羽交い締めにされ、黒塗りのセダンの後部座席に強引に押し込まれた。
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