呪いから幸せへ

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呪いから幸せへ

「私の人生は、後1年で終わる。」 その先の結末を知っている以上、もう黙って死ぬしかないのだと、私は死を覚 悟した。 白い天井に白いカーテン、そんな病室も段々見飽きてきたと、そう思ってい たころだった。 検査から帰ってくると、一通の手紙が私のベッドの真ん中に置いてあった。 まるで、呼んでくれと主張しているかのように置いてあったので、私は手紙に 手を伸ばした。 「誰からなんだろう?」 宛先を見ようとひっくり返すと、そこには「拝啓、18歳の紗枝へ」と書いてあり、私は新手の嫌がらせなのかと疑問を抱き、中身を読まないでそのままゴ ミ箱に捨てようとしたその時。 封筒の底に、何か輪っかのようなものが入っていることに気が付いた。 「…、見た後に捨てても遅くはないよね?」 そう思い、ベッドに向かい封を開けた。 すると、中から出てきたのは、指輪と手紙で、その指輪をつまんで光に当て、 まじまじと見ていると、何かが掘ってあった。 睨むように、掘ってある文字を読もうとした。 「SAE×KAITO 20××年×月××日」 私の名前が掘ってあり、横には男の人の名前が書かれていたが、私が注目し たのは日付だった。 日付は、10年後になっていて、私は頭が困惑した。 10年しか生きられない私が、どうしてこんな指輪を…? 私は、震えた手で手紙を読みだした。 紗枝へ 18歳の君は、一体どんな生活を送っているかな? ちゃんとご飯は食べているのだろうか? 泣いていないだろうか? 紗枝が闘病生活のことを、俺に話してくれた時、瞳に涙を浮かべていたことが、今でも忘れられない。 君にもっと早くに出会って、抱きしめてやりたかった。 紗枝は、これからたくさんの人に出会って、沢山の人に支えられて、幸せに生きていくんだよ。 だから、今を諦めないで。 生きることを、諦めないでほしい。 いつか君に出会うその日まで、どうか生きて抜いてほしい。 大好きな君が、今じゃ考えられないくらい幸せな生活を送っていることを、どうか心の片隅に置いておいてほしい。 それでは、また巡り合うその時まで。                      海斗より ずっと心の中で、決めつけていた。 「私は死ぬんだ」と思い、殻の中に閉じこもっていた。 けど、こんな私でも生きていけるんだと言ってくれる人がいた。 それが、呪われた時間から抜け出した瞬間であった。そして私は、再び生き始 めたのだ。 人は大好きな人に出会うため生まれたんだ。
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