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「樋浦、この処理もやっといてくれ」
「え……と、あの」
「今日中によろしく」
心の中でため息をついた。
また他の人の仕事をふられた。
しかも、今日中。
今日こそ駅前にできた
服屋に寄ろうかと思っていたのに。
とにかく早く終わらせるしかない。
PCと向き合っていると、
隣の席の上住さんが声をかけてきた。
「樋浦さぁん、お願いがあってぇ」
嫌な予感。
「今日、わたしが給茶器のおそうじ当番なんですけどぉ、彼氏とご飯行くので早く帰らなくちゃで、お願いできませんかぁ?」
私も服屋に行くという予定が……
「……わかりました」
「わぁ!ありがとうございます!樋浦さん、天使!」
まぁ私は誰かとの予定でもないし。
こうして請負った仕事まで
終わらせると、
時計は22時を超えていた。
今日も行けなかった……
しかたなく真っ直ぐ家に帰った。
部屋に入る前にポストを開けると、
バサバサッと中から
封筒やらチラシやらが落ちた。
「あーあ」
思わず声に出して拾うと
そのなかに、
可愛らしいキャラクターの封筒
があった。
宛名を見ると
自分の名前が書いてある。
「……あっ」
それは、
10年前に高校の授業で書いた
自分への手紙だった。
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