10年前から10年後へ

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「樋浦、この処理もやっといてくれ」 「え……と、あの」 「今日中によろしく」 心の中でため息をついた。 また他の人の仕事をふられた。 しかも、今日中。 今日こそ駅前にできた 服屋に寄ろうかと思っていたのに。 とにかく早く終わらせるしかない。 PCと向き合っていると、 隣の席の上住さんが声をかけてきた。 「樋浦さぁん、お願いがあってぇ」 嫌な予感。 「今日、わたしが給茶器のおそうじ当番なんですけどぉ、彼氏とご飯行くので早く帰らなくちゃで、お願いできませんかぁ?」 私も服屋に行くという予定が…… 「……わかりました」 「わぁ!ありがとうございます!樋浦さん、天使!」 まぁ私は誰かとの予定でもないし。 こうして請負った仕事まで 終わらせると、 時計は22時を超えていた。 今日も行けなかった…… しかたなく真っ直ぐ家に帰った。 部屋に入る前にポストを開けると、 バサバサッと中から 封筒やらチラシやらが落ちた。 「あーあ」 思わず声に出して拾うと そのなかに、 可愛らしいキャラクターの封筒 があった。 宛名を見ると 自分の名前が書いてある。 「……あっ」 それは、 10年前に高校の授業で書いた 自分への手紙だった。
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