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全然笑えなかった。
10年前から私は
何一つ変わっていない。
変わりたいと思っていたのに。
私は、机からお気に入りの便箋を
取り出した。
「ごめんね、10年前の私。
10年後の私、待っててね」
書き終わると封筒にいれて
しっかりと封をした。
*
「樋浦ー」
「はい」
課長が私を呼びつける。
「この処理、頼むよ」
ちらっと課長の手元の資料をみる。
これは上住さんの仕事だ。
言わなくては。
10年後の私のために。
「課長……
今日は予定がありまして……
自分の仕事も立て込んでいる
ものですから……」
私は下を向いたままだった。
「そうか。わかった」
手元の資料は、課長の机に戻された。
私は、帰りに行きたかったお店で、
明るい色のワンピースを買った。
私にとっての戦利品だった。
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