ずっとの条件

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ずっとの条件

 「ずっと」っていつまで?なんて、愚問だろうか。  2010年度卒星高演劇部メンバー各位。  お久しぶり!元部長の皆川です。  突然ですが、この度同期の春田紗世さんがめでたくご結婚されることになりました。  つきましては、元演劇部の私たちからささやかなビデオメッセージを贈りたいので、一人十秒を目安に動画を撮って私に送ってください。二十四時間以内に!締切厳守!  まあうちの部で一番の忘れんぼちゃんが主役だから、締切に関しては心配してないけど。万が一遅れた人のところへは…分かってるよね?  それじゃ、よろしくね!  だから僕はこうして、カメラの前に座っては風呂に入り、座っては台詞の練習をし、座っては散歩をし。  つまり何も言えず、時を過ごしていた。  彼女は、あの約束すら、忘れてしまったのだろうか。今でも鮮やかに映像が生きているのは、僕だけなのだろうか。 「僕は絶対役者になる」 「うん」 「それで食べていけるようにまで、なる」 「うん」 「そしたら、迎えに行くから」 「うん」 「だから…待っててくれる?」 「うん」  曖昧でふわふわしすぎたのだろうか。だからこの、やわ風にも飛ばされていくたんぽぽの綿毛のように、彼女の記憶からも見えなくなってしまったのだろうか。 「…いつまで?」  のんびり屋の彼女が、ゆっくり笑うその顔が、いつだって僕を励ましてくれていた。 「ずっと!」  だからちゃんと、訊いてくれよ。  確かなものにしてくれよ。 「…まずいなぁ。もう部長、来ちゃうよ…」  十年前のキミへ伝えたいことなら、すぐにカメラに言えるのに。
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