シンデレラストーリー

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 私があなたに魔法をかけて、もう10年になりますね。    当時あなたは、大衆から羨望の眼差しを向けられ、さぞ優越感に浸れることができたでしょう。今の生活はどうですか?幸せでいますか? ***  「シンデレラ、シンデレラはどこ?」  「はい、お義母様。何か御用ですか?」  「あなた、毎日掃除してるの?ここの窓にホコリがたまってるじゃない?」  お義母様は窓のサッシの部分を人差し指でなぞり、人差し指についたホコリに息を吹きかけ、私に向かって飛ばした。  私が王子様と結婚して10年経った。子供にも三人恵まれ、世間から見れば一見幸せそうに思えるかもしれない。だが現実は違った。    「お義母様、このお城全体を私一人で掃除しろと言われても無理でございます。せめて週に一度でも掃除代行サービスをしてもらえませんか?」    「バカは休み休み言いな。怠けることばかり考えるんじゃないよ。昔はね…」    また始まった。お義母様は、ことあるごとに昔は大変だったと私に説教をする。でもお義母様が嫁いだ時代、まだ貴族が力を持っていて、それなりの数の使用人を雇っていた。    でも私が王子の元に嫁いだ瞬間、時代が動いた。革命が起きたのだ。貴族は次第に力を失った。ほとんどの貴族は使用人を雇うほど財力を持てなくなってしまった。だからこの城の掃除、洗濯、家事全般、全部私がやらなくちゃいけなくなった。    掃除はお城の広さは桁違いだし、洗濯はドレスばかりで全て手洗い。食事も毎回フルコースを作らくちゃいけない。こんなことなら結婚前の家のほうがよほど楽だった。  王子はパリピで、結婚してからも毎晩毎晩パーティーに出掛ける。金欠なのに生活水準を下げれないボンボン。子育てにいたっては常に私一人でワンオペ。  お義父様は、右にあるものを左に動かすことすらしない、ぐうたらな王様。私がいちいち用意しなければ何もしない。子供より手の掛かる介護前。  極めつけは、このお義母様。何かにつけて私をいびる。  そして私が一番嫌なことは、子供のことを言われること。子供三人恵まれたが、三人とも女の子。跡取りがどうのこうのと言われるのが、一番腹が立つ。  こんなはずではなかったのに。 *** 「シンデレラ、元気そうじゃない?」  私の前に10年前の魔法使いが現れた。  私は言ってやった。「あんたがあのとき私に魔法をかけたから人生台無しよ」と。  「そんなこと10年前の自分に言いなさい。あなたガラスの靴、わざと落としたでしょ」
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